●フロム蔵王アイランドの
     ゆかいな仲間たち(98.4)

アイランドの仲間たちの近況をご紹介。

 3月初め、ここ蔵王山麓でもやっと春らしいキラキラした日差しを感じる日が多くなってきた。とはいえ、まわりはまだ白い部分が多くを占めている。
 今年の冬の特徴は、強風が少ないことである。いつもの年なら、降った雪も強風によって身の丈以上の吹き溜まりとなり、雪が着きにくい牧草地ではわずかながらの土色やみどり色が顔をのぞかせていることが多い。今年は、満遍なく雪が大地を覆ったせいか、白一色である。しかし、その雪もこの時期ともなると、春分に迎う太陽の勢いには最早かなわない。見る見るその厚さが薄くなる。雪解けの季節である。

 冬の間中、納屋の中の小屋に封じ込まれていた6羽づつのニワトリとフランス鴨もやっとのことで外にでることが許された。鴨はやはり水辺を好む鳥である。池の中で羽をバシャバシャさせながら、水浴びに興じている。弾け飛んだ水が眩しい陽の光に反射しキラキラ光る。ネコヤナギの芽もパンパンに膨らんでいる。

 冬の間、壁ひとつ隔てたニワトリとフランス鴨は、どんな毎日を過ごしながらこの春を待ち望んだのだろう。そんな双方の様子を垣間見ることができるひとつの足跡がある。
 作為的ではないのだが、構造上彼らをさえぎる壁の天井に近い部分は空いたままになっている。3羽いるフランス鴨のメスはいつも仲たがいしている様子はあったのだがその1羽が壁を飛び越えてニワトリ小屋に侵入していたのである。
 それも、ちゃっかりとニワトリがタマゴを生むための巣箱の中でしっかりと自分のタマゴを抱いているのである。フランス鴨には少々小さすぎる巣箱である。体がはみ出ているのがちょっと滑稽なのだが、彼女にしてみれば真剣そのものである。世話をしてくれている後藤のオバサンによれば、12個くらいのタマゴを抱いているらしい。ニワトリにとっては迷惑極まりないが、勢力関係でいうとフランス鴨のほうが強い立場にあるようだ。
 春が訪れ、やっと閉ざされた小屋生活から開放された彼らであるが、彼女の幽閉生活はもう数十日は続くだろう。ヒナがかえったころ、ここ蔵王にも本格的な春がやってくるのだろう。